頭痛薬が効かなくなった?薬物使用過多による頭痛について専門医が解説
大阪市淀川区のながしま脳神経外科リハビリクリニックは、日本脳神経外科学会専門医による、頭痛から脳卒中まで幅広く診療する脳神経外科クリニックです。頭痛やめまい、しびれなどの神経症状から、脳卒中後のリハビリテーションまで、幅広く脳神経疾患にご対応しています。
頭痛が起きるたびに市販薬を飲んでいるうちに、いつの間にか薬が手放せなくなってしまった。そう感じている方は少なくないかもしれません。頭痛薬の使用頻度が増えるにつれて、かえって頭痛が慢性化してしまうケースがあります。
今回は、薬物使用過多による頭痛という病態について解説します。薬の使い方を見直すことで症状が改善するケースもありますので、思い当たる方はぜひ最後までお読みください。
薬物使用過多による頭痛とは
薬物使用過多による頭痛とは、頭痛薬を必要以上に頻繁に使用することで、かえって頭痛が悪化・慢性化してしまう状態のことです。
英語ではMedication Overuse Headache(MOH)とも呼ばれます。
もともと片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛持ちの方が、痛みを抑えようと頭痛薬を繰り返し使ううちに、薬が効きにくくなり、頭痛が以前より頻繁に起こるようになる。これが典型的なパターンです。
薬を飲んでいるのになぜ頭痛が増えるのかと不思議に感じる方も多いのですが、これは頻繁な薬の使用が脳の痛みを感じる仕組みに影響を与え、痛みに対して過敏な状態を引き起こすためと考えられています。
診察の中でこの悪循環に気づかずに長年過ごされてきた方を多く経験してきました。頭痛薬が悪いのではなく、使い方のバランスが崩れることで起こる状態なのです。
どのような人に起こりやすいのでしょうか
薬物使用過多による頭痛は、もともと頭痛持ちの方に起こりやすいとされています。特に片頭痛の方はリスクが高いと言われています。
具体的には、次のような使用パターンが続く場合に注意が必要です。
• トリプタン系薬剤(片頭痛の処方薬)を月に10日以上使用している
• 市販の鎮痛薬(ロキソニンなど)を月に15日以上使用している
• 上記の状態が3ヶ月以上続いている
市販薬でも処方薬でも起こりうる状態です。複数の種類の鎮痛薬を組み合わせて使用している場合も注意が必要です。
処方薬だから安心、市販薬だから大丈夫ということはありません。
薬が効かなくなったと感じる理由
脳には痛みを感じる仕組みがありますが、頻繁に鎮痛薬を使用することで、この仕組みが変化してしまうと考えられています。痛みに対して敏感になり、以前は気にならなかったような刺激でも頭痛を感じやすくなってしまう状態です。
また、薬の効果が切れるタイミングで頭痛が起きやすくなるため、次の薬を飲むまでの時間がだんだん短くなっていきます。これが繰り返されることで、気づかないうちに薬の使用回数が増え、頭痛がさらに慢性化するという悪循環に陥ってしまいます。
薬の量を増やしても根本的な解決にはなりません。
この悪循環から抜け出すためには、適切な診断と治療が必要です。
自己判断で薬を増やしたり、やめたりしないでください
薬物使用過多による頭痛について知ると、すぐに薬をやめた方がいいのではと考える方もいらっしゃいます。しかし、自己判断で急に薬を中止することはおすすめできません。
薬を急にやめると、一時的に頭痛が強くなることがあります。
これは薬をやめることによる反応で、適切な管理のもとで対処する必要があります。また、頭痛の種類や原因によって治療の進め方は異なります。自己流で対処しようとすると、かえって症状が悪化したり、必要な治療が遅れたりする可能性があります。
薬の使い方を見直したいと思ったときは、まずは専門医にご相談ください。一人で抱え込まずに相談していただくことが、改善への近道です。
診断・治療の流れ
薬物使用過多による頭痛が疑われる場合、まずくわしい問診をおこないます。どのような頭痛がいつから続いているか、どの薬をどのくらいの頻度で使用しているかを丁寧に確認します。必要に応じてMR検査などをおこない、他に原因となる病気がないかも確認します。
治療の基本は、過剰に使用している薬の頻度を減らすことです。
ただし急に中止するのではなく、医師の指導のもとで段階的に進めていきます。この過程で一時的に頭痛が強くなる場合もありますが、適切なサポートを受けながら進めることが大切です。
また、薬の頻度を減らすだけでなく、もともとの頭痛(片頭痛など)に対する治療を並行しておこなうことが重要です。頭痛そのものをコントロールできるようになることで、鎮痛薬に頼る機会を減らすことにつながります。当院では、この両面から治療を進めることを大切にしています。
予防治療という選択肢
頭痛の頻度が高い方や、薬物使用過多による頭痛が疑われる方には、予防治療を検討する場合があります。予防治療とは、頭痛が起きてから薬を飲むのではなく、頭痛の発作そのものを起こりにくくすることを目的とした治療です。
予防薬には内服薬のほか、近年ではCGRP関連抗体製剤(月1回の注射)など、さまざまな選択肢があります。頭痛の種類や頻度、生活スタイルに合わせて最適な方法をご提案しています。
鎮痛薬を飲むたびに頭痛が気になる生活から抜け出すために、予防治療が助けになることがあります。まずは一度ご相談ください。
頭痛薬を適切に使うために知っておきたいこと
頭痛薬は、正しく使えば頭痛の痛みを和らげてくれる大切な薬です。
問題は薬そのものではなく、使い方のバランスです。
目安として、鎮痛薬の使用は月に10日未満に抑えることが望ましいとされています。痛みが出るたびにすぐ薬を飲むのではなく、痛みの程度や状況に応じた判断が大切です。また、複数の種類の鎮痛薬を組み合わせて使うことも、リスクを高める可能性があります。
ご自身の薬の使い方が気になる場合は、いつどのくらい薬を飲んでいるかを記録しておくと、受診の際に役立ちます。
薬の使い方を一緒に見直していきましょう
頭痛薬の使用頻度が増えてきた方や、以前より薬が効きにくくなったと感じている方は、薬物使用過多による頭痛という病態が関係しているかもしれません。薬が悪いのではなく、使い方を見直すことで症状が改善するケースもあります。
当院では、頭痛の種類や原因を確認したうえで、現在の薬の使い方も含めて診察し、患者さま一人ひとりに適した治療をご提案しています。頭痛で困っている方に、困らなくなっていただくこと。それが治療のゴールだと考えています。繰り返す頭痛や慢性的な頭痛でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
